見ず知らずの“親類”との 財産分けを解決相続の相談事例 CASE 03
愛媛県在住の西條隆司さん*の弟・昇さん*が80歳で死去。昇さんは生涯独身であったことから、葬儀等の一切は隆司さん、真子さん*ご夫妻が行いました。死後に発生した相続は、隆司さんら姉兄が相続人となりますが、長兄と次姉はすでに他界しており、その子であり隆司さんの甥姪である3人が相続人に加わることが判明しました。3人のうち2人は、隆司さんに一任すると申し出ましたが、1人が隆司さんらの予想とは異なる主張をしてきました。
そのため、葬式の際に葬儀社の方から『もし今後何か困ることがあったら相談してみてください』と紹介された、行政書士でISCA会員の進藤さんに相談しました。
お写真:隆司さん(仮名)・真子さん(仮名)
※依頼者とご家族のお名前は仮名です
対応会員
進藤 誠
やまびこグループ 行政書士
行政書士法人やまびこ 代表社員
宅地建物取引士、相続アドバイザー、相続事業承継コンサルタント、断熱アドバイザー、ファイナンシャルプランナーなど各種資格を保有し、関連業界の専門家とのネットワークで、相続や事業承継の問題解決を行っている。
相続・事業承継コンサルティング協会会員
― 弟さんが亡くなられてから相続に至る経緯を教えてください。
隆司様 弟は私の家から車で20分ほどのところに住んでいました。子供の頃から仲が良く、数年前まではよく会っていました。それがちょっとしたことで口論になり、仲違いをしてしまいました。今から思えば些細なことですがお互い意地を張ってしまい、それにコロナもあってまったく会わないようになってしまっていたんです。
真子様 ある日、病院から電話があって、昇さんが救急車で運ばれたって。本人が主人の連絡先を言ったそうなんですが、私たちが駆けつけたときは、もう意識がありませんでした。
隆司様 独身で、母親が亡くなった後は一人で気楽にやっていたようですが、酒飲みで、ずいぶん不摂生をしていたらしい。それが原因で倒れたようです。
真子様 とにかく私たちでなんとかするしかないですから、お葬式やら何やらで大変でした。
隆司様 葬式が終わって家を片付けに行って、役所の届けや銀行への連絡とかいろいろやらなければならないわけだけど、何がどこにあるのか何もわからない。弟の住んでいた家は、元々は私たち兄弟が育った家なんですが、もう誰も住まない。だから、家の始末もしなければなりません。でも、何をどうやっていいかまったくわかりませんでした。そんな状態で、進藤先生にご相談したわけです。
― 行政書士の進藤さんはどなたのご紹介でしたか。
真子様 それが、葬儀社の方なんです。お葬式で、こんな事情でお葬式をするんだと担当の方に話したら、「後々何か困ることがあるかもしれない。良い先生がいるから、もし何かあったらご相談してみてください」と連絡先を教えてもらっていたんです。そのときは、こんな大変なことになるとは思っていませんでしたが、銀行とかで相続の手続きなどが必要だとわかって、電話してみたんです。
進藤 私の事務所は税理士さんなど士業の方々やISCAのメンバーのほか、いろいろな業種の方々とアライアンスを組んで仕事をしています。また、地域密着でやっていますから、地域のさまざまな方が相続などの相談や案件のご紹介をしてくださいます。その葬儀社は、以前そこを利用したご遺族が相続問題を抱えていて、私が問題の処理したことがありました。以来、利用者で相続や死去後の手続き等でお困りの方がいるとお声がけして、私の事務所を紹介してくださっています。
― 手続きはどのように進められましたか。
進藤 西條さんからご相談を受け、相続する財産と相続人の確定から着手しました。申告は死後10か月以内ですから同時進行です。財産のうち、預金は見つかっている通帳から確認しましたが、問題は土地です。家屋は古く無価値で、そのほかにもう1か所、弟さん名義の土地があることがわかったのですが、それがいわゆる無接道の土地で価値がない。売るのが大変で、持っていても税金がかかるだけの土地です。私の判断では、地元にいる隆司さんがこの2つの土地を相続し、現金は相続人で分ける。もちろん、隆司さんが負担した葬儀費用や、これから生じる費用も考慮して分配するというものです。
隆司様 あの家には多少の愛着はありますが、住むことはもうありません。もう1つの土地は処分したいが、処分できない土地だということは素人の私にもわかります。お金のほうは、進藤先生にお任せです。ふつうに分けてくれればいいと。
進藤 相続人となるご兄弟のうち、存命なのは隆司さんとすぐ上のお姉様だけ。長兄、長姉の方はすでにお亡くなりになっていて、そのお子さんたちは県内と東京におられることがわかりました。
隆司様 上の兄、姉とは歳が離れていましたし、2人とも若いうちに家を出てしまい、その後、付き合いがありませんでした。すぐ上の姉と私、そして弟が地元に残り、私と弟は地元企業に定年まで勤めました。私たちにとっての兄弟はこの3人という感じなのですが、先生に調べてもらって、甥が2人と姪が1人いることがわかりました。上の兄、姉は亡くなったらしいということは風の便りで何となく知っていましたが、その家族には会ったこともありませんし、まったく知りませんでした。
進藤
相手がどんな方かわからないので、ご連絡は私からすることにしました。相続人としての権利が生じていることをお伝えし、財産分与の方針をご説明し、ご了解をいただきたいと、それぞれにお伝えしました。このうちお1人は、即座にご了解をしていただけました。自分が相続人になるなど思ってもいなかったので、いろいろご苦労されている隆司さんにすべてお任せすると仰ってくださいました。もうお1人の方は「事情がよく呑み込めないので、少し考えたい」とのこと。でもこの方も、2度目のご連絡では「お任せする」と言っていただけました。
このお2人の反応はごくふつうの反応と言えますが、問題はもう1人の方でした。最初の電話で、これは厄介なことになるかもと感じました。
― 最初の連絡で、トラブルになるかどうかわかるものなのですか。
進藤
経験からなのですが、相続人になったという連絡を差し上げたときに、多くの方は、まず亡くなった方はどんな方で、どうして亡くなったのか、その方の身寄りはどんな方なのかを聞かれます。しかしときどき、そのようなことよりも相続財産はいくらもらえるのかということばかり聞く方がいます。関心がそこにしかない方の場合は、揉めることが多い。今回も電話でそんな感じを受けました。
相続等に多少知識があるようで、事務的に済ませたいということなのかもしれませんが。とにかく私どもがお話しした分与の方針ではだめだと仰る。
隆司様 売れない土地も含めて処分して現金で分けろというのには、ちょっと驚きましたね。
真子様 世の中、いろんな方がいるのですね。直接お話しせず、進藤先生にお願いしてよかったと思いました。
進藤 私としては経験上、こういうことはある程度想定はしていましたので、まずはご本人に納得していただけるように説明と説得をすることにしました。
― 説得はどのようにされたのですか。
進藤
お話を伺うと、お金が必要なような感じでした。そこで、土地まですべて分割するとなると時間がかかるということをお伝えしました。土地は無価値で、処分にはかえって費用がかかることさえあるとも申し上げました。
ここは丁寧にご説明しました。そのようなやり取りを経て、当初の方針でご納得いただきました。時間と手間に対して、手取りがどうなるかを判断してもらったわけです。
― 土地の処分も含め、その後はどのように進みましたか。
隆司様 土地は進藤先生にお願いして処分先を探しています。なんとかなりそうだと思っています。
進藤 事務所のネットワークには不動産業者も複数社あります。その中には、こうした処分しにくい土地を専門に扱う業者もいます。将来の開発を見越して周辺を一括で買うなど、無価値の土地に価値を生ませるノウハウがある業者がいるんですね。また、隆司さんのお姉様の相続についての整理をはじめています。
隆司様 姉が施設に入ることになり、判断ができなくなったり、万一の場合に備えて、必要なことは調べて整理していただくことにしました。姉の夫は亡くなっていますし、今回の弟の相続のことも含め、甥姪にわかるようにしておかなければなりません。
真子様 私たち自身のこともやっておかなければならないとも思っています。それも、進藤先生にお任せすれば何でも解決してくれるので安心です。
進藤 いえいえ、私が何でもできるわけでなく、専門家のネットワークがあるからこそ、お客様のご期待に応えられるのだと考えています。
今回のポイント
- 地域の事業者と提携し、お困りの方からの相談を受付
- 資産・不動産価値の調査と、相続人の調査・確定をし、現状の問題点を把握
- 専門家の丁寧なヒアリングと説明により、相続人全員が納得の上で方針が決定
- 価値がない土地の処分については、専門家のネットワークを活用し業者を選定
- 信頼関係を築き、相談者様ご自身やお姉様の相続についても整理を開始